🧑🏫
J2優勝での昇格へ「0.5年を闘う」ではなく「1.5年でJ2優勝J1昇格へ」―RB大宮アルディージャの編成意図と今季の論点
今年のRB大宮、さらに「別クラブ」感がある
慌ただしく短いオフシーズンが終わり、トップチームは始動。契約未更新が3名いる一方で新加入の話も続き、RB大宮アルディージャは相変わらず話題に事欠かない。
で、個人的に言いたいのは
今季のRB大宮は「0.5年だけ戦うためのメンバー」でもなければ、「0.5年を実験に使い切るためのメンバー」でもないんじゃないか
J2優勝で昇格するために、勝点を積み上げながら来季へ接続する。つまり、“土台作りを伴う強化”に移行しているとみてます。
1. 体制が変わった。だから「チーム作りのやり方」も変わる
2025シーズン途中、方針の相違により(24シーズンのクラブ作りを担った)山本氏と契約解除。その後は川田テクニカルダイレクター(TD)が兼務する形でクラブを進めてきました。
ただ、強化部長の仕事って「選手を獲る」だけではない。
スカッド設計、育成の接続、トレーニングの方向性、判断基準の統一などなど。それらを専任で継続的に見て決める存在がいないと、どうしても短期の対症療法になりやすい。
この流れを大きく変えたのはまず
- スチュアート・ウェバー氏(HoS:Head of Sport)
の就任。それから
- 西村卓朗氏(SD:スポーティングディレクター)
の就任。昨年の監督交代を経て宮沢監督体制へ移行した流れも含め、クラブは「兼任で回す」段階から「役割分担して積み上げる」段階へ入った。今季が昨季と“別クラブ”に見える最大の要因はここにあるでしょう。
1-1. ウェバーHoS:勝ちながら「価値」を作る設計者
ウェバー氏といえば、前所属ノリッジ・シティでのクラブ再建が有名です。資金繰りが厳しいクラブを立て直すために、
- アカデミー中心の編成
- データに基づく的確な補強
- 安価に獲得→高値で売却→施設投資
- リーグ攻略から逆算し、育成と勝利を両立できる監督の抜擢
を軸に、プレミアリーグ昇格を2度経験しました。
データ重視でありながら、実際のプレーを細部までチェックして判断するタイプ。大宮はもともとアカデミーの素地があるので、そこに「育成・補強・売却・再投資」を一本の線で繋げられる人材が入った意味は大きいです。
U-18からの早期昇格(エドワード真秀、熊田佳斗など)も、その延長線上の判断に見えます。
またレッドブルとしては第二のヤン・ディオマンデ的な19歳くらいでリーグを代表しうる選手を、日本でも作りたいのではないでしょうか。それがマギージェラニー蓮の獲得にも繋がりそうですよね。
1-2. 西村SD:獲って終わりにしない。“運用の人”
西村氏は、かつて大宮で右サイドバックとして主力を担った人物。引退後はVONDS市原で監督兼GM、水戸ホーリーホックで強化部長やGMを歴任して大宮へ帰還しました。
この人の強みは、いわゆる「獲得→育成→価値化」を日常の運用として回せるところ。水戸での取り組み(選手プロファイル設計、育成プロセス、メンタリティや社会性まで含めたプログラム整備)を見ても、編成が“獲って終わり”にならず、市場価値向上含めて戦力を最大化にしていく意図もあるのではないかと思います。
『勝点を取りにいきながら、チームの伸びしろを最大化する。』
この方向へ、クラブの基準を揃えていけるSDだと思っています。
1-3. 結論:今季は「半年で結論を急がない」し「半年を捨てて実験もしない」
ウェバー氏が設計思想を作り、宮沢監督のサッカーへ寄せつつ、将来性のある若手比率を上げる。そこから先、育成プロファイルや運用の標準化、人材育成まで含めて“日常を作る”のが西村氏のターン。
だから個人的には、こう言い切りたい。
今季は「半年だけ戦って終わり」でも、「半年を実験に捧げて来季から本番」でもない。
勝ちながら、来季へ繋がる土台を整える。これが今季のRB大宮の本質なのではと。
それを感じるのは、昨年の第一線で活躍した選手をほぼ残した箇所に感じます。
先日のキャンプ動画にカプリーニの映像も何度か移りましたが、ほぼ契約更新と思います。
2. 補強リストから読むRB大宮の狙い(2026年夏まで見えるピース)
今季の新加入メンバーは以下の通り。
新加入一覧
GK
- トム・グローバー(無所属/前所属:ミドルズブラFC)
- 若林学歩(横河武蔵野FC/復帰)
DF
- 酒井舜哉(RB大宮U-18)
- 加藤聖(ファジアーノ岡山)
- 西尾隆矢(セレッソ大阪)
- 尾崎優成(ヴィッセル神戸/期限付き:〜2026/6/30)
- 熊田佳斗(RB大宮U-18)
MF
- 松井匠(阪南大学)
- 阿部来誠(横河武蔵野FC/復帰)
- 神田泰斗(RB大宮U-18)
- 加藤玄(名古屋グランパス/期限付き:〜2026/6/30)
- エドワード真秀(RB大宮U-18)
FW
- 山本桜大(柏レイソル/育成型期限付き:〜2026/6/30)
- マギージェラニー蓮(FC琉球)
- 日髙元(神村学園)
2-1. まず最後尾。J2優勝を狙うなら「失点の管理」から逆算する
宮沢体制で狩りのベースが整いそうな矢先に笠原が抜け失点は増加した。だからこそ、GKの安定は“直接の勝点”になりやすいと判断したのかなと。(もちろんGKが全て悪いわけでは無いが、この解体具合はそう考えても良さげだなあと。)
トム・グローバーの加入は、理想の完成形より先に、優勝を狙う現実解(失点の管理)を優先した補強と捉えています。
2-2. U-18昇格+若手獲得の厚みは「使い捨てない」意思表示
酒井、熊田、神田、エドワードのU-18昇格。
そしてマギージェラニー蓮、日髙元といった若い層の獲得。
これは“半年だけの編成”とは逆の発想です。競争環境を作って伸ばすのが前提。優勝を狙いながらも、来季へ繋がる土台(=伸びる母集団)を確保しているように見えます。
2-3. 他クラブアカデミー出身の獲得と「自アカデミー軸」は両立する
象徴的なのがマギージェラニー蓮の獲得。Jリーグではまだ多くないですが、海外では一般的な「アカデミー起点の獲得」を強める動きにも見えます。
ただし、ウェバー氏は自クラブアカデミー中心の考えも示している。
まず見るべきはアカデミー選手と様々なところから語られている。本人もアカデミー産の活躍が喜びと言うほど。ここから先はレッドブルにあったアカデミー選手の採用とプロ契約が増えるはず。そして足りない箇所は別のアカデミー(マギージェラニー蓮)や高校サッカー(日髙元)に注目していくのではないか。
2-4. 選手獲得は「再生価値」と「将来価値」の匂い
まず日本人選手での例ですが、
- 西尾隆矢(DF):パリ五輪世代の日本代表。セレッソ大阪でも100試合以上は出場も現状は代表からは遠のきもう一段階成長を掴みたい。翼を授けられれば返り咲きも?つまりは“再生価値”を見出しつつ、市原の移籍が進んでも代役なれる。
- 日髙元(FW):高校選抜候補に選ばれてはいますが怪我による離脱もあり、世代別代表にはならず。高校選抜で得点王でのシンデレラボーイになりましたがここもレッドブルが絡めば大きな成長ができる可能性が高い。つまり“将来価値”がある選手。
大宮は昨季のスタメンであった(笠原負傷後だが)加藤や下口を放出しており、選手の“現状能力”と“将来性”含めてだいぶ基準値も要求値も高い。からこそどちらかが欠けたら獲得基準にはならないのだろうなと思う。
外国籍枠の使い方も、方向性が見えやすいです。
- トム(GK):東京五輪世代のオーストラリア代表。トッテナムアカデミーでは期待の若手であり試合も絡んでいた。しかしプロ後英国での活躍は難しかった。なので適切なプロセスを踏めば“再生価値”を見出したのかもしれない。
- カウアイ・ディニス(MF):まだ決まってないけど本当に若い中盤を獲得したなら、即戦力だけでなく“将来価値”も含む設計になりやすい 。また彼もブレイクしたのは25シーズンでその活躍具合からヨーロッパでのプレーも期待されている。
大宮が過去に出していたスカウト要件に「ポルトガル語必須」が含まれていた点からも、ブラジル市場を見据えた体制づくりを推察できる。
これまでのJリーグで、日本とブラジルの親和性を注目している可能性が高いのと、気候などのところから欧州路線でなくブラジルだったのかはそのうち研究したいところ。
3. 契約未更新3名:ここは優勝戦線とクラブ戦略がぶつかる場所
現時点で契約未更新となっているのは以下の3名です。
- DF 市原吏音(AZアルクマールがオファーとの報道/U-21日本代表に参加中)
- FW カプリーニ(キャンプ参加)
- FW 磯﨑麻玖(キャンプ参加)
市原については、海外オファー報道が出ている以上、クラブは「戦力維持」と「資産価値(移籍)」の判断を迫られる。J2優勝を目指すなら即戦力の維持は重要。でもRB化の象徴は「適切なタイミングで価値を最大化し、次へ投資する」ことでもある。このテーマは今季の大宮を語る上で避けられません。だからこその世代別代表の西尾隆矢の獲得だったのでしょう。ここは世代別だった彼を日本代表にさせるための“再生工場”と見てもいいかもしれません。
一方でカプリーニ、磯﨑はキャンプ参加という事実があります。少なくとも現場は、コンディションや連携を見ながら「戦力としての継続」を視野に入れている可能性が高い。ここは続報待ちです。
4. 期限付き移籍期間は0.5年。でも=実験とは限らず。
尾崎優成、加藤玄、山本桜大はいずれも期限付きが〜2026/6/30。表記上は半年(0.5年)で、ここを根拠に「1.5年契約で設計している」と断定はできません。1.5年なら通常は〜2027/6/30です。
ただし、半年ローン=実験でもない。
- 前半で足りないピースを素早く埋める
- 強度・走力・複数ポジション適性など“即効性”を足す
- 夏の本番になる市場で再設計できるよう、固定しすぎない
J2優勝を狙うなら、こういう「勝負の合理性」は十分にあり得そうだなと。
今季ハーフシーズンから勝ちにいくためにも、同時に来季へ繋がる土台も作る。これをやるチームは、半年で結論を急がないし、半年を捨てて実験にも振り切らない。
他クラブで「1.5年(18か月)更新」の事例が一部に見られることから、発表していないだけで大宮も同様の時間軸での契約をしている可能性はあります。ただし、現時点では個人的な憶測です。
J2優勝で昇格するために必要なのは、勝点と“積み上げ”
RB大宮が今季取りにいくのは、理想の完成形だけではなく勝点もです。J2優勝での昇格には、現状ある「xGと得点力」を維持しながら「失点の管理」「主力となる選手の稼働率」「競争の厚み」がものを言うとスチュアート・ウェバーHoSが考えたと見ても良さそう。(去年見てれば誰もがそう思うけどね)
HoSとSDが揃った今の大宮は、勝ちながら積み上げるための土台を用意し始めた。
この半年は“実験期間”ではなく、“優勝へ向けた土台整地”
夏の市場と次の冬市場では、育成しきれなかった分と足りなかった分は調整しながら、よっぽどな事がない限り大幅なベース変更なく進んでいくのではないかと思います。